皆さんは、初対面の人とでも気兼ねなく会話ができますか?
もちろん、相手のキャラクターにもよると思いますが、お付き合いや仕事の場面では、否応なく、まだ付き合いの浅い人や初対面の人とでも一定時間、会話をしなくてはいけないという場面に遭遇することもありますよね。そんなとき、うまく会話ができないととても居心地が悪くて、なんだか気まずくて、すごく気疲れしてしまったなんていう経験、ある方も多いのではないでしょうか?
距離を縮められなかった私の失敗談
初対面や付き合いの浅い人と短い時間で距離を縮めるって、とても難しいですよね。
でも、それができれば、人間関係を築いていくうえで非常に役に立ちます。
かくいう私も過去には相手との距離を縮めることができずに、数々の失敗を繰り返してきました。
たとえばインタビュー取材は、限られた時間の中で「対象者にいかに本音で話してもらえたか」が仕事の評価につながります。そのため相手との距離を縮められないと、とても残念な結果に終わってしまうのです。
まだ私が30代の頃。パーソナリティを担当していたラジオ番組の企画で、ユーミンこと松任谷由美さんと20分ほど対談をさせていただける機会に恵まれました。
学生時代から大好きだったユーミンと対談。その企画を聞いた時からドキドキして、何日も前からどんな風に話をしたらいいものか、「ダメなアナウンサーだと思われないような質問をしなければ」と、それはそれは悩んで下調べや準備を入念にして、質問の原稿をきっちりと書いて臨みました。
収録当日。マイクを挟んだテーブルの向かいには、憧れのユーミン様が優しくも高貴な微笑みをたたえ、座っていらっしゃいます。
「ユ、ユーミン様と向かい合って二人だけて座っている!!」
私はすっかり舞い上がり、マイクに私の心臓の音が入ってしまうのではないかと思うくらいドキドキバクバク。緊張のあまり、笑顔もひきつりまくりです。
「とにかく、恥ずかしい質問はしないようにしなくては…」
「ユーミンに失礼なことを言って嫌われないようにしなくては…」
頭の中は、そんな思いでいっぱい。ただただ手元の原稿に目をやるばかりで、ユーミン様と目線を合わせて話すこともままならず。結局、相手の素の部分を少しも引き出すことはできず、私の憧れの人へのインタビューは不完全燃焼のまま終わりました。本当に勿体ない話です…(涙)
誰だって、憧れの人を前にしたら、そんなものなのかもしれません。
ですが経験を重ねた今なら、何がいけなかったのかがよく解ります。
当時の私は
「こんなことを聞いたら、ユーミンにどう思われるかしら?」
そんなことばかりを考え過ぎてしまっていたのです。
つまり相手との距離をできるだけ縮めて、少しでも素の部分を引き出さなくてはいけない時に、「自分がどう思われるか」という点にばかり意識が向いてしまって、通り一遍の面白くないインタビューになってしまっていたのです。
「相手にどう思われるか?」を気にしないこと
このように、相手との距離を縮めて本音を引き出したいときには、
「こんなことを言ったら相手は自分のことをどう思うだろうか?」
という思いが、相手との間で壁となってしまう場合があります。だからといって、相手に失礼なことを言うのは論外ですが、相手に対して誠意や善意をもっている場合は、あれこれ気にせずにのびのび話した方が、相手も心を開きやすくなります。つまり、
「自分がどう思われるのかを気にしすぎると、相手との距離は縮まらない」
ということなのです。それは、テレビのタレントさんを見てもわかります。
本音トークが売りのタレントさんたちが絶大な支持を集めるのは、視聴者が親近感を感じるからですよね。親近感=相手との距離が近く親しみを感じるということです。
相手との距離を縮めるということは、自分を(あるいは本音を)どこまで相手にさらけ出すことができるかにかかっていると思います。「相手にどう思われるか?」ということを気にせずに、少しでもいいから自分をさらけ出すことで、相手も安心して素顔を見せてくれる。その結果、距離が縮まる。そう思います。
先日、ある化粧品販売のコールセンターで電話の営業をしている友人から、こんな話を聞きました。
その友人はお客様から「この商品はいくら?」と聞かれたときに、どうしてもすぐに値段を答えられないのだそうです。なぜなら「値段をそのまま伝えると、『高い』と思われてしまうのではないか」と不安になるからだそうで、ほとんどの場合、最初に値段について説明をしてから価格を答えしてしまうらしいのです。
例えばこんな感じです。
お客様:この商品はいくらなの?
友人:はい。三か月使えるので、一か月にすると3000円で、一日当たりわずか100円なんですよ。ですから…
お客様:(途中で話をさえぎって)で、結局一ついくらなの?
友人:9000円です。
お客様の反応は、「ふーん」とか「あぁ。」とか、あまり芳しいものではないそうです。
それはそうですよね。このやり取りだと、一番気になっているのは『価格』なのに、すぐに答えが返ってこず、最初に言い訳をされているように聞こえなくもないですから。
結果、お客様は心の中にモヤモヤとした気分を抱えることになり、お客様との距離はむしろ遠くなってしまうわけです。いわゆる「引かれてしまう」状況ですね。
では、あれこれ考えずに「9000円です」とストレートに答えたとしましょう。
もしかすると、お客様から「高いわね」と返事が返ってくるかもしれません。でも、「高いわね」という言葉は、「ふーん」とか「あぁ。」とかいう返事よりも、お客様が本音を言ってくれているということになります。
「高いわね」とお客様が本音をポロリと漏らした時こそ、距離を縮めるチャンスです。
せっかくお客様の方から本音をのぞかせてくださったのなら、すかさずこちらも素の自分をさらけ出すことをおすすめします。
例えば、「高いわね」と言われた後に、「そうですよね。最初はそうおっしゃる方が結構いらっしゃるんですよ。実は私も最初、値段だけを聞いた時にはそう思いました(笑)」と、包み隠さず「そういうお客様も多い」「実は自分も最初はそう感じた」ということをさらけ出し、お客様との距離を縮めた上で、
「ただ、やっぱり使っていただくと、『よかったわぁ!』というお声をたくさんお寄せいただく商品なんです。このハイクォリティの商品が一日あたり100円でご利用いただけるということで、このお値段でも多くの方にご好評いただいているんですよ」という風にお伝えしたら、どうでしょう。最初から値段に対して言い訳のようなフレーズを並べるよりも、お客様の心にはストレートに響くのではないでしょうか?
このように自分の素の感情やネガティブに受け取られるかもしれない情報などを思い切ってさらけ出すことで、相手との距離を縮めることができるのです。
実際に、私もTVショッピングでは、ゲストの方と次のようなトークをよく挟むようにしていました。
その番組はすごく美味しい地鶏の炭火焼の商品のご紹介でした。私も大好きな商品なのですが、地鶏をシンプルに炭火で焼いただけのものなので、どちらかというと見た目は黒々した感じ。味も香りもお伝え出来ないTVでは、中々おいしさが伝わりにくい商品なのです。実際に私も最初は「これ、本当においしいのかな?」と思っていたくらいですから。そこで、私はこの商品を紹介する際に、ひとこと自分の感情をストレートに盛り込みました。
「この見た目ですからね、ぶっちゃけ、私も最初に見た時はこれ美味しいの?って本当に思ったんですよ。(笑)でも実際に食べてみると、炭の香りが本当に香ばしくって、お肉も歯ごたえはあるのに柔らかくて、塩加減も絶妙で、やみつきになっちゃいました。」
この言葉で、それまで少し緊張気味に話していたゲストの方も「でしょーっ!?」と大笑い。おかげさまで大好評をいただき、番組終了後に完売をいたしました。
いかがですか?
相手との距離を縮めるために素の自分をさらけ出すということは、初対面の人に対しては結構勇気のいることですが、仕事や人間関係を構築する上で得られるメリットはかなり大きいと思います。
そのためには、
「こんなことを話したら、相手からどう思われるだろう?」
まずは、その思考を捨て去ってみてください。
そして、あれこれ考えずにほんの一言だけでもいいので、自分の感情や意見をストレートに相手に話してみてください。そうすれば、思ったより簡単に、相手との距離を縮めることができると思いますよ!