食後、一杯のコーヒー。
心が落ち着き、ほっこりできる幸せタイム。
私はいつも、朝食後に飲んでいます。
「いつ、コーヒーを飲みますか?」と聞かれたら、
「飲みたいときに飲むでしょ。」と答える人が多いかもしれません。
ですがコーヒーは『いつ飲むか』によって、美と健康の『強い味方』にも『恐ろしい敵』にもなってしまうのですよ~。
というわけで、六車奈々の時間割美容。
今回は、『朝のコーヒー』『夜のコーヒー』です。
朝のコーヒーは、体内時計をリセット!
コーヒーと言えば、まっさきに思い浮かぶのがカフェインですよね。
朝のカフェインは眠気を吹き飛ばし、基礎代謝を上げてスッキリと覚醒させてくれます。
これだけでも十分に朝コーヒーを飲むメリットはありますが、さらに素晴らしいことが!
なんと最近の研究で、カフェインは他の物質と比べて体内時計のリセット効果が非常に強いことが分かりました。
さて、『体内時計』について簡単に復習。(しっかり知りたい方は、こちら)
日本人の体内時計は、一日が約24時間10分。地球の自転より少し長いため、地球に合わせずに生活していくと、毎日10分ずつずれていき、いずれ昼夜逆転してしまいます。そこで私たちは、毎日地球の時間に合わせて体内時計を合わせる必要があります。これが、体内時計のリセットです。
ところがこの体内時計のリセットは、2ステップ踏まないと完了できません。というのも人間の体内時計は2種類あるからです。
1つは、脳にある『中枢時計』。
もう一つは、内臓や細胞など全身にある『末梢時計』です。
まず朝起きて朝日を浴びると、脳にある『中枢時計』がリセットされます。
次に、朝日を浴びてから1時間以内に朝食を取ると『末梢時計』がリセットされます。
こうして、『地球』『中枢時計』『末梢時計』の3つの時計を朝にしっかりと合わせることができた人は、一日を絶好調に過ごすことができるのです。
さて、話をコーヒーに戻しましょう。
朝のコーヒーは、カフェインのおかげで『末梢時計のリセット効果』がバツグンに高く、しっかりと体内時計を合わせてくれます。
しかしカフェインの驚くべきところは、これだけではありません。
なんとカフェインは、中枢時計もリセットしてくれるのです!!!
太陽の光は、『中枢時計』だけ。
朝食は、『末梢時計』だけ。
しかしカフェインは、『中枢時計』『末梢時計』の両方をリセットしてくれるのです!
これは凄すぎます!!!
つまり「どうしても朝ごはんを食べられない」というときは、コーヒー(カフェイン)一杯飲めば、それだけで中枢時計も末梢時計もリセットされるということ。栄養面を考えると圧倒的に不足ですが、こと「体内時計をリセットする」という、美と健康にとって大切な基本はクリアできます。
『私はコーヒーが苦手!』というアナタ。ご安心ください。コーヒーじゃなくても大丈夫。大きな体内時計リセット効果があるのは『カフェイン』ですので、紅茶や緑茶、抹茶なども良いですよ~。
というわけで一日を快適にスタートさせるには、朝のコーヒー(カフェイン)が超おススメ!
・朝起きて光を浴びる
・1時間以内に『炭水化物+たんぱく質』の朝食をとる
・コーヒーを楽しむ
私も実行している朝の過ごし方です。
心も身体も軽く、頭もスッキリ!
しかもコーヒーには抗酸化作用のあるクロロゲン酸(これについては、また近々コラムに書きますね)が入っているので、美しくなれる!
良いことづくしの朝コーヒー。おすすめです!
夜のコーヒーは、魔物
さて、朝には素晴らしい働きをしてくれるカフェインですが、夜に摂取すると非常に厄介なことになります。その理由は、2つ。
1.睡眠を阻害する
2.体内時計が遅れる
では、順に見ていきましょう。
1.睡眠を阻害する
私たち人間は、他の動物よりも『大脳』を大きくしてきたからこそ、食物連鎖の頂点に立つことができました。つまり鋭い爪も牙もない人間にとって、一番の武器は『大脳』です。
この大切な大脳、何をエネルギーに働いているでしょうか?
そう。ブドウ糖ですよね。
頭を働かせると、ガソリンとしてブドウ糖が消費されます。このとき、燃えカスが出てくるのですが、その一部に『アデノシン』があります。
アデノシンは、睡眠物質。これが脳内にドンドン溜まってくると眠くなると考えられています。つまり脳を働かせるたびにブドウ糖が燃えてアデノシンが作られ、アデノシンが脳内に溜まってくると眠くなるのです。
ただし、ここで問題が。
アデノシンが増えただけでは、眠くなりません。アデノシンは、『アデノシンA2A受容体』とガッチリ結合すると、睡眠中枢を刺激して眠くなるのです。ようするに睡眠中枢を刺激するためには、アデノシンという鍵とアデノシンA2A受容体という鍵穴が合体する必要があるのです。
実は、『寝る前にカフェインを取ると眠れなくなる』と言うのは、ここに理由があります。というのも、カフェインの構造は、アデノシンとそっくりなのです。しかもアデノシンよりも先に『アデノシンA2A受容体』と合体してしまうため、いざアデノシンが脳内に溜まって『合体しようかな。』と思っても、すでにカフェインが合体してしまっているため、空きがないのです。しかもカフェインは、A2A受容体と合体をしても、睡眠中枢を刺激してくれません。すると『脳は疲れているのに、眠れない』という状況が生まれてしまうのです。
睡眠は、疲れた大脳の再起動だけでなく、傷ついた細胞を修復したり、ホルモン分泌や免疫力アップなど、美と健康には絶対に欠かせないもの。ひとことで言うと、「最も努力のいらない美容法」です。これを妨害してしまう夜のカフェインは、絶対に避けたいところですよね。
夕食後は、絶対にカフェインをとらない!!!
これは、私が徹底していることです。
だって、「最も努力が要らなくて、最も効率の良い美容」である睡眠を阻害したくないから。
私の場合、食後はローズヒップティーやデカフェ(ノンカフェイン)のコーヒーや紅茶を飲むようにしています。今は色々な種類が出ていて、ノンカフェインも色々と楽しめますよ。
2.体内時計が遅れる
朝に飲むカフェインは、体内時計をしっかりとリセットしてくれますが、
夜に飲むカフェインは、体内時計を遅らせてしまうことがわかっています。
体内時計が遅れるということは、体内時計が後ろにずれてしまうこと。つまりその人にとって、夜がなかなかやって来なくなるので、いつもなら眠くなる時間帯でも眠くならないのです。
アメリカ コロラド大学ボルダー校のケネス・ライト教授は、被験者5人に、寝る3時間前にダブルエスプレッソ相当のカフェインを摂取させ、体内時計にどのような影響が見られるのか、49日間にわたって実験をしました。その結果、
「寝る3時間前にエスプレッソをダブルで飲むと、体内時計が40分ほど遅くなる」
ということがわかりました。(実験について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。)
地球と体内時計がずれてしまうことは、美と健康にとって大敵でしたよね。
と思うと、やはり夜のカフェインは良くないのです。
ということで、『朝のコーヒー』『夜のコーヒー』、いかがでしたか?
これはコーヒーだけでなく、カフェインが入っているものは全て同じです。
カフェインを上手に利用して、メリハリある1日を過ごしましょう!
【参考文献】
柴田重信 小田裕昭 加藤秀夫 堀江修一 榛葉繁紀 香川靖雄(2009)『時間栄養学』女子栄養大学出版部
大塚邦明(2012)『体内時計の謎に迫る』技術評論社
古谷彰子著 柴田重信監修(2017)『食べる時間を変えれば健康になる』ディスカヴァ-・トゥエンティワン
明石真(2013)『体内時計のふしぎ』光文社新書
産業技術総合研究所(2007)『きちんとわかる時計遺伝子』白日社
田原優(2019)『体を整えるすごい時間割』大和書房
Effects of caffeine on the human circadian clock in vivo and in vitro(Science Translational Medicine 2015年9月16日) 2021.7.14.アクセス